プライベートレッスン初期のころは失敗の連続。日本語学校から社会人向けの学校に移ったときのこと。「クラスより人数が少ない分、丁寧に教えられる!」と喜んだのもつかの間。学習者から耳の痛いことを言われ、反省した経験があります。
「先生は教えすぎます」
韓国の学習者二人のセミプラーベートレッスンで二人とも同じ名字キムさん(仮名)。二人とも熱心で理解が早く、練習問題も順調に進む。「すごい!二人とも教えたことを一度でマスターしている!合格まちがいなしだなー。よしよし♪」と内心このレッスンは楽勝だと思っていました。
あまりにもスムーズに進むので、ある日レッスンの終わりに「何かリクエストはありますか」と聞いてみました。すると、キムさんの一人が言いました。
「では、言いたいことがあります。」
思い切って言うぞー!という気迫を感じました。
「失礼ですが・・・よしだ先生は教えすぎます。
韓国語でも意味が同じ文法はたくさんあります。
ですから、先生が全てを説明しなくてもいいんですっ!」
キムさんがぐーっと緊張しながら話してるのが伝わりました。
びしっと言われ、私も顔が固まっていたと思います。韓国の人は教師(目上の人)に対して直接不満を言うことは滅多にないからです。余程がまんしていたのでしょう。
1,学習者の一番言いたいこと
キムさんの言葉どおり、「わかっているときはサクッと進んでほしい」「もっと効率よく」ということだと思います。学習者のレベルより少し難しいこと扱うこと、いわゆる「i+1」が適切なインプットという知識はあるものの、実際レッスンとなると抜け落ちていました。
2,「モレなく説明せねば」という思い込み
「クラス授業とちがって丁寧に教えられていいな」「試験のために文法の使い方などモレなく説明せねば」と思っていたのです。この「モレなく説明せねば」は私(教師)のこだわりであって、学習者たちは私のやり方に従ってくれていたのですね。
3,そのクレームから学んだこと
授業態度が従順で真面目、不満を言わない学習者は言いたいことを抑えている可能性があります。レッスンがスムーズに進んでいるときこそ注意が必要です。教師(コーチ)からマメに要望を聞いて言ってもらうこと。学習者が思ったことを気軽に話せるようになれば、思ったことを小出しに言ってもらってレッスンの方法を調整することができます。
不満を訴えるのは勇気がいることですね。二人は試験が終わると同時に合格を確信していたのか「ありがとうございました!お世話になりました!」とさわやかに去っていきました。