「レベル差のあるクラスで誰に合わせて授業をしたらいいか悩む」という相談をいただきました。クラスの学生のレベルがバラバラで、一斉授業をするという場合です。真ん中あたりの中間レベルの学生に合わせている、という人もいるでしょう。私がクラス授業をしていたのは大分前ですが、「レベル差が激しくて困る」という悩みは今も尽きないようです。今回は、駆け出しの先生に向けて対応のヒントを書きます。
クラスで誰に合わせて授業をしているのか
授業の始めから終わりまで特定の学生たちに合わせるのは公平ではありません。かと言って全員に合わせるのはムリですよね。今回は「自然にできる合わせ方」を紹介します。
昔の私も「クラスで誰に合わせて授業をしたらいいのか」と悩んでいました。レベル差の激しいクラスだと尚更です。そして「レベル差」というのはいつでも生じるのでした!
過去の自分を振り返ってレベル差のあるクラスでの失敗のモトだったのはこの3点。
その1:誰に合わせるでもなく自分が準備してきたことを進めて、空中に向かってやっているような、結局は誰のためにもなっていない授業になってしまった。テストでは、よくできる学生だけが正解し、他の学生は散々な結果に。
その2:導入部分でよくできる学生たちの「それ、知ってる~!」「わかった」という声に流されて導入と説明が雑になり、下位レベルの学生は置いてけぼり。練習しようとしたら、ほとんどの学生が理解していなかったことが判明し、クラスがザワつく(汗)
その3:応用練習(ロールプレイ・ディスカッションなど)のとき、「先生、むずかしいよ~」という下位レベルの学生に影響され、応用練習をとても簡単なものにしてしまった。上位レベル学生は退屈そうな、やる気が出ないムードに。彼らの伸びしろも奪っていた・・・
この3つの失敗を防ぐための解決策は?と考えて実践したのが、合わせる相手を授業の流れの中で変化させることです。
授業の流れの中で合わせる相手を変える
①授業の序盤の部分では下位レベルの学生にも理解できるようにゆっくり導入。初めて聞く学生のために120%の丁寧さで。このとき上位レベルの学生が「知ってる~」「こんなの簡単だー」とつまらなそうな顔だったとしても、心折れないことです。
②授業の中盤、練習のときには中間レベルの学生たちを意識し、発言を促したり、活躍できるようにします。クラスを支えているのはあまり目立たない真ん中レベルの学生たちなのですが、私たち(教師)はよくできる学生やケアが必要な学生に注意が向いて彼らのことを忘れがちではないでしょうか。
③後半の応用練習では、上位レベルの学生の伸びしろを意識して、彼らにとって少し難しめの課題に挑戦してもらいます。このとき、下位レベルの学生が難しそうにしていたとしても気にしすぎないことです。
とはいえ、授業中に「今は誰に合わせる?」と考えながら進めるのは難しいですよね。その場の学生の反応も見ないといけないですし、授業は生モノですね。ですので、これを自然に行うために、授業案(教案)を作るとき、こうするのはどうでしょう?
クラスの誰かを具体的にイメージして授業案を作る
導入部分を考えるときは「〇〇さんはこれでわかるだろうか」、応用の部分を考えるときは「〇〇さんにとってこの練習は挑戦したくなるものだろうか」とクラスの誰かを具体的に思い浮かべて、その日の授業のゴールまでのステップを決めていくことです。そうすると、すでに準備ができているので自然になりますね。「誰に合わせて授業をしたらいいのか」の解決策に近づいていますでしょうか。応用演習はレベルごとにタスクをいくつか用意するのもアリですし、ペアやグループ編成を工夫することで、ある程度カバーできると思います。
昔の私は授業全体を振り返ったとき、「〇〇さんはあのとき退屈そうだった」「〇〇さんには難しそうだった」とか特にネガティブな反応が気になっていました。それで、自分の気持ちの揺れから、進め方の方針やタスクの選び方に自信がが持てませんでした。当時の自分に「やみくもに合わせることを辞めて落ち着こうよ」と言いたいです。
人が集まれば、ある人にとってちょうどよくても他の人に合わないことはよく起こること。つまり、大なり小なりレベル差があるのが普通なのです。多くの学生に満足してほしいけれど、人によって簡単すぎたり難しかったりする、それがクラス授業の宿命のような気もします。(もちろん満足度の高い授業もあります)
チームティーチングですとそれぞれの教師(コーチ)が気になる学習者をケアするのがいいかもしれません。「私は勉強について来られない学生が気になる」「私はよくできる学生を伸ばしてあげたい」など感覚の違う教師が担当することでバランスが取れ、全体的にはうまくいくのではないでしょうか。