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傾聴コーチング

【読書メモ】聞く技術 聞いてもらう技術

「聴く」より「聞く」のほうが難しい。

P9

東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』(2022)ちくま新書。「居るのはつらいよ」の著者の新作です。たしかにそう。わたしの場合、学習者やコーチングのクライアントさんの話は予め「しっかり聴こう」というスイッチが入る。注意深く「相手の言いたいことは何だろう?」と関心を寄せながら聴ける。しかし、長い間「傾聴」のトレーニングをしてきたにも関わらず、親や妹、パートナーとか身近な人の話を”ただ終わりまで聞く”ってことがとても難しい。何気ない日常の話から気がかりなことまで話題がどんなことでも、どうしても途中で口を挟みたくなってしまうのだ。

あなたが話を聞けないのは、あなたの話を聞いてもらっていないからです。

P19

なんだかドキッとする。たしかに、わたしは仕事上、他者の話を聴くことが多いんだよね。仕事のほとんどが「聴くこと」だと言ってもいいし、好きでやっていることだ。幸いわたしの話はパートナーがよく聞いてくれている。しかし、ホントに安心して何でも話しているかというと微妙?相手だって仕事で疲れているだろうし、あんまりとりとめのない話に付き合わせるのも悪いなっていう気持ちもあって、100%話したいことを話しているかと言うとそうでもない。もしかして、わたしも聞いてもらうことが不足しているのかな?

聞くことの本質は、相手との関係性にあるということです。関係がよければ話を聞けるし、関係が悪くなったら話を聞けなくなります。話が聞けないのは技術がないからではなく、関係性が悪くなっているからです。

P45

筆者は聞くための細かいワザ(技術)を紹介してくれたあと、このように言う。技術ではなく相手との関係性。関係がよくないと聞く前から聞く耳を持てなくなるというか、「どうせこんな話になるのだろう」「わかってもらえないだろう」とか自分のほうからネガティブな予測をしてしまって、話が予想と合っていると「ほうらやっぱり!」と一人合点し、よく聞いていないかもしれない。技術ではなく関係性に注目して、まっさらな気持ちで聞いてみようか。できればね。相手のこと「苦手だけどちょっと聞いてみよう」とか意識しよう。

エビデンスやファクト、ロジックや物語が行き交う。だけど、言葉は両者を余計にヒリヒリさせるだけで、全然伝わらない。すると、より強く主張せねばと互いに思うから、声は大きくなり、言葉は硬くなる。トゲが生える。かくして、切っ先鋭くなった言葉たちは対話を深めるのではなく、対立を深めてしまう。

P206

相手に言いたいことを伝えるために、論理的に説明することが大事と言われるけど、案外そういう伝え方が相手を不快にさせることもある。どんなに正しく、エビデンスがあることでも相手のこれまでの考えを真っ向から否定すると感情を傷つけてしまう。そうすると、「正しさ」が相手から聞く耳を奪ってしまうんだ。自分が「絶対正しい」と思うときこそ、理論や証拠より、相手に聞いてもらえる伝え方をすることが大切なんだ。最近、そこかしこでやり取りするうちにヒリヒリする空気を感じる。ヒリヒリ、ギスギスしてくると、そのやり取りから人は離れていくよね。聞いていて気持ちが疲れちゃうから。

友人に「ただただ話を聞いてくれる人はいないかなあ」と相談したところ、「良い人がいるよ!」と紹介してもらうことができた。話を聞いてもらう約束。とても楽しみだ。

ABOUT ME
吉田 有美
日本語キャリアサポーター。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」。日本語ボランティア向け「学習者との会話を広げる深めるコミュニケーション」講師として活躍中。個人向けサービス「大人にための自己分析・自己理解」をテーマとするコーチングセッションを行う。日本語学習者への個人レッスンも提供中。