最近のコーチングセッションで急増しているこちらのお悩みのヒントです。「仕事を断るのがとても苦手です。自分も大変なのに『担当する人がいなくて困っている』『是非あなたにお願いしたい』と頼まれるとつい引き受けてしまいます。でも、引き受けてみると負担が大きくて後悔します」
今は様々なところで人手不足が叫ばれています。人手不足のために仕事を依頼する側もされる側もストレスを抱えています。依頼される側としては、断るには心理的負担があり、引き受ければ負担が増すことには違いありません。
私たちには「断る権利」がある
以前、学校に勤めていたころ、断るのがとても苦手でした。「他に頼める人がいない」「是非お願いしたい!」と言われると弱い。「引き受けなきゃよかったな」と後悔しつつ、また強く頼まれると引き受けてしまうこともしばしば。
なぜかというと、組織にいると「断ったら仕事を干されるのでは?」「自分の評価が下がるでは?」と不安でした。しかし、そんなことは杞憂で仕事を断ることで「干される」といううことはありませんでした。自分のネガティブな妄想こそが断れない原因だったのです。
アサーション・トレーニング(さわやかな自己主張)の本、「自分らしい感情表現」第6章アサーティブに断る(土沼雅子著 日本・精神技術研究所 金子書房)にはこんなことが書かれています。
(以下意訳)
誰にでも断る権利があります。相手の頼みごとには、意義や価値のあるものもあれば、不当な要求もあります相手にとって正当でも自分には無理で不当ということもあるかもしれません。正当なものでも、不当なものであればなおさら、断っても良いのです。断るというのは「私はここまでOKですが、これ以上は無理です」と自分の限界を相手に伝える、ことだと言えます。
断るというより「自分の限界を伝える」「境界線を伝える」と考えるのがよさそうですね。
また、伝えるときの表情と態度も大事だということです。私の場合は「相手(依頼者)にわるいな」と思うと、断るとき「すみませーん」と少し愛想笑いするクセがありました。相手によっては「本当にできないの?もう少し頼んだらやってくれそうだな」と見えたかもしれません。言いにくいことを伝えるときこそ、礼儀正しく、しかしキッパリと言うことです。「お引き受けできなくて申し訳ありません」と。そのほうが相手に真剣な姿勢が伝わるのです。
「NOをキッパリ伝えること」は勇気が要ります。しかし、考えてみれば「人が足りない」というのは組織(管理する側)の事情であって、その負担を雇われる側が我慢して負っているとキリがないのです。自分の限界・境界線を伝えることは、仕事と自分の生活の調和を保ち、心身の健康を維持するうえで当然の権利だと言えます。
勇気を持って断れば、きっと晴れやかな気分になるはずです。それに、人手不足の問題は今いる人の我慢で補うのではく、別の解決策を組織が考えるべきだと思います。