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【読書メモ】限りある時間の使い方 オリバー・バークマン

”誰もが急いでいる社会では急がずに時間をかけることのできる人が得をする”(本文より)

「限りある時間の使い方」オリバー・バークマン著、 高橋瑠璃子-訳(2022)かんき出版

この本に書かれている現代の人々の忙しさや時間管理の厳しさはいささか極端なような気もするし、わたしはそこまでではないなあと思うけど、思い当たることもあった。

便利になって時間に余裕ができるかと思いきや、むしろ生活のペースが加速するというか、ますます生産性や効率を良くする方法を目指して人々はイライラしている。そう言えば、わたしも何か手続きの入力に手間取ったり、サイトへのアクセスが数十秒かかるとき、接続待ちのサインがクルクルと回っているとイライラを感じるなあ。

昔より待てなくなっている。時間に追われる、時間管理が下手。時間ってなんだろう?

農民の仕事に終わりはない。(中略)全て完了した状態というのはありえないし、ゴールを決めて競争する意味もない。

P28

農民ではないけど、そもそも「全て完了した状態」というのはありえないよね。何を目指してTo Doリストを作ったり、作業の時間を決めたりしているのだろう。生産性を高めるため?効率よく作業するため?それは何のためだろう?「全て完了したら思う存分やりたいことをしよう」とか?だけど、全て完了した状態はありえないのです

例えば、教師が授業の準備を効率よく半分の時間で終わらせたとして、その余裕ができた時間で何をするの?たいていの人はのんびりしてないみたいですね。もっと仕事や勉強を増やしたりする。すると、ますます忙しくなってもっと効率よくしないといけなくなるのではないかな。

今日はここまでやったら終わりと決めて、あとは趣味の時間にする勇気を持とう。

不思議なのはやらなければならないことのほとんどをやる気になれないことだ。別にトイレ掃除や確定申告だけではない。心からやり遂げたいと思っていることでも、やらなければと思うと、なぜかやりたくなくなっているのだ。

P127

あるある。ほとんどのことがそうだ。アイディアはいつも無数に浮かぶ。思い浮かべて「これは素晴らしい考えだ!ぜひともやろう」とノートに書きつけたりするのだけど、実際は10このアイディアのうち1つ実行すればいいほう。それも、その1つに取り掛かるまでネットで闇雲に検索したりして時間が過ぎる。ネットサーフィンと言えば聞こえはいいけど、調べているうちに目的を見失っていたりする。徘徊して家に戻れなくなっている人みたいだ。

この解決策は「ただやるだけ」なんですけどね。わかってますよ。一つ選んで手を付ける、そうすれば、少なくとも文章ならメモ書きだけでもできる。わかってはいてもちょっとツイッターでも見るか、と自ら気が散るようなことをしてしまうんです。

こういうのを”親密な邪魔者”と言うそうです。いますよね。甘いものを控えようとすると親しげな調子で「それは今はいいんじゃない?ケーキでも食べようよ」と誘ってくる友人。そして、「せっかく誘ってくれたんだしなー」とまんまと誘いに乗る自分。わかってますよ。

誰もが急いでいる社会では、急がずに時間をかけることのできる人が得をする。大事な仕事を成しとげることができるし、結果を未来に先送りすることなく、行動そのものに満足を感じることができる。

P186

「急がずに時間をかけることのできる人が得をする」、これは勇気の出る言葉だ。自分の価値観を肯定されたように感じる。得をするっていう言葉にも弱い。自分が満足できること長く続けていれば、人生全体も幸せなのではないだろうか。目先の効率や損得、人と比べるとますます切迫感を生むし、気持ち的につらくなる。必要なことなら時間をかければいい。即効性より自分の満足感とリズムを大切にしようと思う。

ABOUT ME
吉田 有美
日本語キャリアサポーター。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」。日本語ボランティア向け「学習者との会話を広げる深めるコミュニケーション」講師として活躍中。個人向けサービス「大人にための自己分析・自己理解」をテーマとするコーチングセッションを行う。日本語学習者への個人レッスンも提供中。