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【日本語コーチング】間違いの指摘の仕方

相手が誰であっても間違いを指摘するのはむずかしいもの。「間違いをどのように指摘してほしいか」は個人差が大きく、プライドやモチベーションにかかわる繊細な部分ですね。間違いを指摘するって難しい。コーチングセッションで話を聞く限り、その人の印象とその人が望む指摘のしかたは違うことが多いなあと思ったことから、この記事を書きました。相手に合った伝え方、相手が受け取りやすい伝え方について考えてみましょう。

生徒さん、部下、後輩、ご家族に間違いを指摘する場面を思い出してください。正直「こういえば間違いない」という単純なものではないし、相手が即受け入れる”魔法の言葉”もありません。とはいえ、相手が受け取りやすい指摘をするための目安になればいいなと思い、書きました。

相手の普段の反応を観察する

間違いを指摘されたあと意外とやる気が出る人もいれば、ミスを指摘されると異様に悔しがる人もいれば、なぜか「すみません!」とこちらが恐縮するくらい謝る人もいる。「それはむずかしいですね!」と若干イラつきを見せる人も、がっくり落ち込む人もいる。観察していると、この人はよくこんな反応をするんだなあと、相手の反応の傾向に気づくはずです。

間違いを指摘されたときと反対に、良いフィードバックを受けたときの様子もです。ポジティブなフィードバックを受けたとき「いやいやこんなの当然ですから」とイマイチ反応がうすい人、「そんなにホメないでください」と恥ずかしそうに否定する人、パッと嬉しそうな表情になって喜びを全面に出す人もいますね。

さらに、相手の普段のコミュニケーションも観察します。単刀直入に要点を言う人、相手の気持ちに配慮してやわらかい言い方をするな人、よく自分から人をホメるする人、それとも事実を淡々と話す人なのか、その人の特徴を観察してみましょう。

「どのように指摘してほしいか」直接聞いてみる

・・・で、間違いを指摘するとき、どうするのが正解なの?って思いますよね。一旦、相手に聞いてみましょう。相手にどうしてほしいか聞いてみたところで、100%の答えが得られるとは限らないのですが、質問することが考えるきっかけとなり、対話の糸口になります。人によっては「きびしく全ての間違いを言ってください」という人もいます。しかし、相手にとっての「きびしく」というのが、自分と同じはずがありません。「全ての間違いを…」と言われても、全てちくいち指摘するのはどうなんでしょう。

一方、「ネガティブなことは一切聞きたくない」という人もいますが、だれに、どんな言い方をされるのかによります。信頼している人の言うことなら聞くのかもしれません。

わたしたちは、もともとの性格、受けた教育、家庭・友人・教師・職場の人などの人間関係。育った文化、仕事の経験…これらが複雑に影響し合い、今の自分の感じ方・考え方・ものごとの捉え方ができています。ですから、方法としては直接サクッと聞いてみる。それをきっかけに対話を始めましょう。

自分の思い込みに気づく

私たちは、おとなしくて繊細な感じの人にはこうしませんか。「なるべく注意を避け、相手が間違いに気づくように促す」「はっきり言うと傷つきそうだから、遠回しに言う」 反対に、さばさばとした明るい快活な人には「はっきりとした言い方でストレートに指摘する」「そんなに気にしないだろうから、言いやすい」と思っていませんか。


おとなしくて繊細な印象の人に見えても、「ふつうに指摘してほしい」「その都度、言ってほしい」「気を使った言い方をされると返って気になる」という人は多いです。総じて”ふつうに言ってほしい”ってこと。私もおとなしく見えるほうですが、間違いはそのまま事実を言ってほしいです。何も直されなかったり、やけにホメられたり、気を使った言い方をされると、相手の気遣いに気づいてしまいます。そして「これでいいんだろうか??」「間違っていたら言ってくれなきゃ困る」ってかえって不安になります。

一方で、言いたいことははっきり言う、いかにも竹を割ったような性格に見える人から「まずは、自分で気づけるようにうながしてほしい」「はっきり指摘されると傷つく」「意外とどーんと落ち込むんです」との声もあります。気丈に見えても意外とガラスのハートなんだなあ、気をつけねば!と肝に命じました。相手の印象で「あの人はこういうタイプだから、こうしたほうがいい」と決めるのは思い込みです。

相手が受け取りやすい言い方を考える


わたしはこれまで伝え方をしくじり、相手を傷つけたり、気を悪くさせたりして、後悔したことが幾度かあります。原因は・・・「自分がして欲しい指摘のしかた」を当たり前のように他の人にもしていたからです

あなたはどんなふうに指摘してほしいですか。実はわたし、自分がこうなんです。

  • 客観的に事実を淡々と指摘してほしい
  • ここはこのように直したほうがいいと具体的に言ってほしい
  • 間違いを指摘する前にあえてポジティブなことを言われると居心地悪く感じる
  • 感情的なもの言いをされたり、声が大きいと萎縮して聞けなくなる

特に相手から怒りとかイライラを感じると、心を閉じて傍観者となり、やりすごす自分がいます。そんなときは、自分の間違いについて冷静に受け止めることがむずかしい。「うるさいなー、もう勘弁!」という気持ち。さすがにいい年なので、イライラをぶつけられることはないんですが。。。同じ間違いでも淡々と事実と理由を言われれば「ハア、そういうことでしたか、すみません。」とすなおに聞けます。

それが自分にとってあまりにもフツウの感覚なので、他の人もそうだろうと思っていたのです。つまり、過去の私は相手の間違いを指摘をするときは「冷静に感情を交えず、淡々と事実を具体的に伝えるのがよいだろう」と思いこんでいました。丁寧に具合的に言えば、相手はわかってくれるはずだと。相手が腑に落ちない様子の場合は、説明が足りなかったかなと思い、また同じことを言ったり。相手からすると「ずいぶんくどいな」と感じたはずです。あなたはどうでしょうか。

相手と自分はまったくちがう人。相手の受け取りやすい伝え方を選ばないと伝わりません。

以前のわたしの伝え方では相手に感情が伝わらなくて、ポジティブなフィードバックも足りなかった。ホメるのはわざとらしく聞こえるんじゃないかと思いすぎでした。人によってはわかりづらいんです。それでも、自分の傾向に気づき、観察、対話をすることで、以前より早い段階で、どうしてほしいか相手に正直に話してもらえるようになってきました。「実はわたしはこうしてほしい」と本心を言ってもらうのです。すぐに正解が得られなくても、がっかりしないでくださいね。すぐに教えてもらえるような”正解”なんて大したもんじゃないのです。

まずは自分を観察し、自分のフツウ(傾向)を振り返ってみましょう。「わたしはこうなんだけど、あなたはどうですか?」と自分のことを話して、相手に質問することが対話の始まりになります。

ABOUT ME
吉田 有美
キャリアカウンセラー&傾聴を中心とするコーチングを行う。日本語学習者へのプライベートレッスンも提供中。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」、企業・日本語ボランティア向けアクティブ・リスニング(傾聴)の講師としても活躍中。