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【日本語コーチング】敬語の教え方、これだけで印象がぐっと良くなる(尊敬語)

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学習者の「敬語、むずかしい⤵」をなくしたい

 敬語は使えたほうがいいけれど、日本語初級者にとってはハードルが高いですね。私は学習者の「敬語、むずかしいー(涙)」という苦手意識をなくしたいと思っています。それに、初級者なら『です・ます』を使って話せるだけでも充分丁寧だと考えています。

ここで言う敬語とは、「みんなの日本語」を例にとって言うと、49課の尊敬語「いらっしゃいます・おっしゃいます・召し上がります・なさいます・ご覧になります・ご存じです・帰りになります、帰られます」など、50課の謙譲語「参ります・おります・申します・拝見します・お目にかかります・存じます・伺います・持ちします」などを指します。「げんき」には「帰られます」の形はありませんが、取り上げている語彙は似ています。

よく使われている教科書には初級後半に敬語が盛り込んであります。しかし、日本語学習者の中には特に敬語を必要としない日本語学習者もいるもので、彼らを苦しめることになります。また、「時間がかかる割には使わない」という学習者もいます。

とはいえ、個人レッスンであれば、敬語のセクションは教師次第でいくらでもシンプルにできます。私は学習者の継続学習のために、なるべくむずかしいと感じさせないように工夫しています。ここでは、敬語を話す必要性がない学習者を対象に話を進めます。いずれ必要になるから教えておいたほうが・・・と思うのはムダ。本人が必要だと感じていないと、学習意欲が湧きません。学習者が必要とするときが教えるときです。

そこで、初級者の個人レッスンで敬語を扱うときは、最初に以下の2点を強調しています。

  1. 敬語が少しわかると旅行・飲食店・買い物のとき便利ですよ
  2. 敬語が少し使えるとあなたの日本語の印象がぐんと良くなるよ

相手の言いたいことがわかり、応答できればOK

ホテル・飲食店・買い物のとき、相手が言っている意味がわかって、応答できればコミュニケーションとして充分です。

1、よく使われる場面を紹介する

「こちらで召し上がりますか」

「こちらをご覧ください」

「何時ごろいらっしゃいますか」

「召し上がる」「ご覧になる」「いらっしゃる」がどんな場面で使われるか紹介します。「店で食べるか聞かれているのだな」など、相手の質問がわかって応答できれば充分です。

2、キーワードで意味を予測してもらう

おタバコはお吸いになりますか」

「お支払いはカードになさいますか」

ご予約はお済みですか」

お名前は何とおっしゃいますか」

これは敬語の問題ではありません。「たばこ」「支払い」「予約」「名前」などキーワードが拾えれば、学習者は「はい・いいえ」、クレジットカードを出す、名前を言うなど応答できます。相手の言うことに、応答できればコミュニケーションとして完ぺきです。

3、もともと知っている動詞から予測してもらう

「お待ちください」などは、教師が何度か言うと「待つ・待ちます」という言葉から予測できます。「お書きください」「お取りください」「ご注意ください」も。ここでも学習者は、相手の言うことがわかればOKです。

以上の3つのケースでは学習者がスムーズに言えるまで練習させる必要はないですね。「召し上がりますか」を良い発音で言えるまで練習するのは、学習者のニーズがあるときだけです。

プライベートレッスンにおいては余計な練習はばっさりカット。「召し上がります」「ご覧になります」など本人が発話する機会が少ないフレーズの口頭練習はしません。(逆に、学習者が飲食店に勤めているなどニーズがあるときはします。)

言えるようになる必要がない場合意味がわかって応答できれば大丈夫!

4、「いらっしゃる」をスルッと言えるようにしよう

私は初級の学習者なら「いらっしゃる」だけでも使いこなせれば、もう充分洗練された印象になると考えています。例えば、「明日いますか」と「明日いらっしゃいますか。」と聞かれたときの相手への印象はどうでしょうか。

「〇〇さん、いますか?」→「〇〇さん、いらっしゃいますか」、「明日も来ますか」→「明日もいらっしゃいますか」、「〇〇さんもいたんですね」→「〇〇さんもいらっしゃったんですね」

「いらっしゃる」だけスルっと言えるようにする。「いらっしゃる」は店員さんの「いらっしゃいませ」の呼びかけを日に何度も聞くので、おなじみのフレーズ。それに「いらっしゃる」だけで「行く・くる・いる」の3つを現すので頻度が高い表現です。

それで、まずは「いらっしゃる」を自由に使えればOKとします。学習者が相手に「いらっしゃる」を使うだけで好印象だからです。

初級の尊敬語はこの辺でよしとして、あとは中級以降に必要に応じて紹介していきます。

毎日勉強する留学生とちがい、個人レッスンは時間も回数も限られています多くの学習者のレッスンは週1くらいです。時間、回数、集中力とエネルギーを有効に使いましょう

敬語のレッスン、あえて伝えたほうがいいこと

あえて、学習者に言葉にして伝えたほうがいいこともあります。「敬語が苦手」っていう学習者は知らないのかもしれませんから。それは・・・

どれだけ本人が得するかということ

「日本で働くなら敬語は大事」「日本のビジネスマナー」と力説するより、敬語を使うと本人の印象があがる、コミュニケーションのスタイルとしてメリットがあると伝えるのはどうでしょうか。ちなみに、これまでの学習者に「いらっしゃる」だけでも言えると洗練された感じがします、プロフェッショナルの日本語に聞こえますよと言ったところ概ね納得でした。

最後に、「尊敬語」っていうネーミングは「ポライト・スタイル」などにに変えてほしいですね。尊敬していない相手にもたくさん使いますからね。

ABOUT ME
吉田 有美
おとなのための自己分析・自己理解をテーマとするコーチングを行う。日本語学習者へのプライベートレッスンも提供中。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」、企業・日本語ボランティア向けアクティブ・リスニング(傾聴)の講師としても活躍中。