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【日本語コーチング】敬語の教え方、これだけで印象がぐっと良くなる(尊敬語)

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学習者の「敬語、むずかしい⤵」をなくしたい

 敬語は使えたほうがいいけど、日本語初級者にとってはハードルが高いですね。私は余計な時間をかけたり、学習者の「敬語はむずかしい」という苦手意識をなくしたいと思っていました。それに、初級者なら『です・ます』だけでも充分丁寧ではないでしょうか。

たいていの教科書には初級後半に敬語が盛り込んであります。しかし、日本語学習者の中には特に敬語を必要としない日本語学習者もいるもので、彼らを苦しめることになります。

とはいえ、プライベートレッスンであれば、敬語のセクションは教師次第でいくらでもシンプルにできます。私は学習者の継続学習のために、なるべくむずかしいと感じさせないようにしています。ここでは、敬語を話す必要性がない学習者を対象に話を進めます。いずれ必要になるから教えておいたほうが・・・と思うのはムダ。本人が必要だと感じたときが教えるときです。

そこで、初級者のプライベートレッスンで敬語を扱うときは、最初に以下の3点を強調しています。

  1. 敬語が少しわかると旅行・飲食店・買い物のとき便利ですよ!
  2. まずは「いらっしゃる」だけマスターしよう!
  3. 敬語が使えると日本語の印象がぐんと良くなるよ!

相手の言いたいことがわかり、応答できればコミュニケーションとして完ぺき!

ホテル・飲食店・買い物のとき、相手が言っている意味がわかって、応答できればコミュニケーションとして充分です。

1、よく使われる場面を紹介する

「こちらで召し上がりますか」

「こちらをご覧ください」

「何時ごろいらっしゃいますか」

「召し上がる」「ご覧になる」「いらっしゃる」がどんな場面で使われるか紹介します。「店で食べるか聞かれているのだな」など、相手の言っていることがわかって応答できれば充分です。

2、キーワードで意味を予測してもらう

「おタバコはお吸いになりますか」

「お支払いはカードになさいますか」

「ご予約はお済みですか」

「お名前は何とおっしゃいますか」

これは敬語の問題ではありません。「たばこ」「支払い」「予約」「名前」などキーワードが拾えれば、学習者は「はい・いいえ」、クレジットカードを出す、名前を言うなど応答できます。相手の言うことに、応答できればコミュニケーションとして完ぺきです。

3、もともと知っている動詞から予測してもらう

「お待ちください」などは、教師が何度か言うと「待つ・待ちます」という言葉から予測できます。「お書きください」「お取りください」「ご注意ください」も。ここでも学習者は、相手の言うことがわかればOKです。

以上の3つのケースでは学習者がスムーズに言えるまで練習させる必要はないですね。「召し上がりますか」を良い発音で言えるまで練習するのは、学習者のニーズがあるときだけです。

プライベートレッスンにおいては余計な練習はばっさりカット。「召し上がります」「ご覧になります」など本人が発話する機会が少ないフレーズの口頭練習はしません。(逆に、学習者が飲食店に勤めているなどニーズがあるときはします。)

言えるようになる必要がない場合意味がわかって応答できれば大丈夫!

「いらっしゃる」をスルッと言えるように

私は初級の学習者なら「いらっしゃる」だけでも使いこなせれば、もう充分洗練された印象になると思っています。「〇〇さん、いますか?」→「〇〇さん、いらっしゃいますか」、「明日も来ますか」→「明日もいらっしゃいますか」、「〇〇さんもいたんですね」→「〇〇さんもいらっしゃったんですね」

「いらっしゃる」だけスルっと言えるようにする。「いらっしゃる」は店員さんの「いらっしゃいませ〜」の呼びかけを日に何度も聞くので、おなじみのフレーズ。それに「いらっしゃる」だけで「行く・くる・いる」の3つを現すので頻度が高いです。おいしい言葉ですね。

そこで、まずは「いらっしゃる」を自由に使えればいい、と思いました。

余談ですが、生徒さんが日程の確認のとき「よしだ先生は金曜日いらっしゃらないんですか。」と聞かれました。私はその生徒さんに「なんて感じのいい人!」と好印象。その学習者の敬語は「いらっしゃる」だけでしたが、充分丁寧に感じました。

「いらっしゃる」を使うだけで劇的に印象が上がる!

初級の尊敬語はこの辺で良しとして、あとは中級以降に必要に応じて紹介していきます。

よく使用されている教科書ではどうでしょうか。「みんなの日本語」では、尊敬語「いらっしゃいます」「ご覧になります」「ご存知です」「なさいます」「召し上がります」「くださいます」「おっしゃいます」「お休みになります」+「おVになります」+尊敬動詞「話されます」などあります。「げんき」には尊敬動詞はありませんが、取り上げられている語彙は似ています。

毎日勉強する留学生とちがい、プライベートレッスンは時間も回数も限られています多くの学習者のレッスンペースは週1−2コマですよね。時間、回数、集中力とエネルギーを有効に使いましょう

敬語のレッスン、あえて伝えたほうがいいこと

あえて、学習者に言葉にして伝えたほうがいいです。「敬語が苦手」っていう学習者は知らないのかもしれませんから。それは・・・

敬語が使えると印象があがること

どれだけ本人が得するかということ

「日本で働くなら敬語は大事」「日本のビジネスマナー」と力説するより、敬語を使うと本人の印象があがる、コミュニケーションのスタイルとしてメリットがあると伝えるのはどうでしょうか。ちなみに、これまでの学習者に「いらっしゃる」だけでも言えると洗練された感じがします〜、プロフェッショナルの日本語に聞こえますよ〜と言ったところ概ね好評でした^^

最後に、「尊敬語」っていうネーミングは「ポライト・スタイル」などにに変えてほしいですね。尊敬していない相手にもたくさん使いますからね。

ABOUT ME
吉田 有美
キャリアカウンセラー&傾聴を中心とするコーチングを行う。日本語学習者へのプライベートレッスンも提供中。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」、企業・日本語ボランティア向けアクティブ・リスニング(傾聴)の講師としても活躍中。