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傾聴コーチング

【研修受講】キャリアコンサルタントとしてのグループファシリテーション

研修の概要

2023年12月17日、対面講座にて南山大学の楠本和彦教授による「キャリアコンサルタントとしてのグループファシリテーション」受講した。本講座は半構成的なグループ・アプローチについて学び、グループワークでファシリテーターとオブザーバーの体験をした。

半構成的なグループ・アプローチとは、話し合うテーマだけがファシリテーターによってあらかじめ決められており、それ以外に事前の決まりごとはほぼなく、話し合いをどのように進めていくかはグループのメンバーに委ねられている話し合いの方法である。一方、構成的グループ・アプローチとは一般にメンバーの合意形成、何かを決定する会議などを指す。

半構成的グループ・アプローチの目的はメンバーの一人ひとりが考えを広める、深める、気づきを得ること。合意形成をしたり、何かを決める話し合いではない。特徴としては、ファシリテーターは話し合うコンテント(内容)とプロセス(人間関係)どちらにも注意を向けることが挙げられる。プロセスというのは以下のような点に注目し、話し合いがどのようになされているかに目をむけることである。

①グループ全体の雰囲気:話しやすさ、自由で開放的かどうか

②コミュニケーション:よく話している人、黙っている人、お互いに話を聞いているか

③個人の言動:あるメンバーの言動の特徴、他への影響、今ココの気持ちはどうか

ファシリテーターの役割は、話し合いの状況に変化を生み出すために意図的な働きかけをすることである。ただし、問題を感じなければ自然の流れに沿うこと。メンバーのニーズと話し合いの目的、実際の話し合いと分かち合い(共有)という一連の流れが適合していることが重要であるとのこと。

気づき・感想

本研修では、ファシリテーターと話し合いのメンバー、オブザーバーに分かれて2回のグループセッションを行い、それぞれフィートバックと感想の共有をした。半構成的なグループ・アプローチの方法は、日本語の授業のグループディスカッションの方法として非常に参考になると思われる。私がファシリテーターをする際、実行したいことは以下の2点。

1つ目は、ファシリテーターは多様なメンバーの共通の関心ごとをテーマに選ぶこと、グループ全体の話の流れを追いつつ、人間関係に配慮することが必要である。話が長くなりがちな人に「他の人の考えも聞いてみましょうか」と区切る。また話していないメンバーに対して「〇〇さんの考えも聞きたいです」「〇〇さん、大きく頷いていましたね。何か言いたいことがありそうですね」などと促しを行い、メンバーが安心して話せるような関わりを心がけること。話し合いの結果を出すことや時間を気にしたり、公平に話してもらわねばと気負いすぎてメンバーの自由な雰囲気を妨げないようにしたい。

2つ目は、話し合いの冒頭でテーマを紹介する際、なぜそのテーマを選んだのか理由と目的、ゴール(一人ひとりが考えを深め、広げること)を説明し、必要であれば自分のケースを話す。話し合いを始める前にファシリテーターとしてのスタンスを告げる。例えば「テーマについて皆さんがなるべく自由に話せるようにファシリテートします。話が大分それたり、一人の人が長く話しすぎている場合には注意をします」など。メンバー間が軽い自己紹介で知り合い、安心感を作り出してスタートすること。

一般に話し合いというと、職場の会議のように合意形成や何かを決定すること、結論を出すことが目的となることが多い。そのため、テーマだけを決めて自由に話し合う場合、友人同士のおしゃべりとはどのように違うのかと疑問だった。しかし、ファシリテーターがいることで心理的に安全な場でテーマについて充分に話し、お互いの話を聴き合う条件が整う。その結果、一人ひとりが考えを広げ、深めること可能になるのである。半構成的グループ・アプローチのファシリテーターの役割は、授業などでグループディスカッションをする際の教師の役割に通ずると思われる。

ABOUT ME
吉田 有美
キャリアカウンセラー&傾聴を中心とするコーチングを行う。日本語学習者へのプライベートレッスンも提供中。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」、企業・日本語ボランティア向けアクティブ・リスニング(傾聴)の講師としても活躍中。