業務委託契約とは
非常勤講師の方で、組織(学校)から業務委託契約を提示されて「業務委託って何?」と思うことはありませんか。業務委託契約とは簡単にいうと「企業などから業務を依頼され、その業務を行うことで報酬を得る契約のことです。単発の仕事や期間限定、プロジェクトごとの仕事に多く、労働基準法や労働契約法による保護は受けられません。例えば、労災の給付、有給もなく、急に仕事が打ち切りになっても失業保険は使えません。確定申告を自分でしないといけません。まず、契約書を見て「雇用契約」か「業務委託契約」を確認してください。雇用契約であれば、契約書に明記すべきことが決まっていて、雇われる側は労働基準法・労働契約法に守られています。業務委託については決まった法律がなく、近い法律としてはこれぐらいです。
【民法第632条】請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」
業務委託の特徴は以下のとおりです。業務委託契約は労働法に守られていないデメリットはありますが、メリットもあります。
- 仕事の方法は自分次第で自由があること。
- 報酬や条件が希望に合う仕事をその都度選ぶことが可能。
- 確定申告のとき、仕事関連で支払ったものは経費として申告できる。(通信費、教材購入、パソコンなど・・・)
とはいえ、業務委託の契約書に明記すべきことは法律で決まっていません。自由度が高いため、組織側に有利な内容にもできます。ですので、契約する前に内容を確認して、自分が受け入れられる条件かどうかが判断のポイントです。
非常勤講師が業務委託の契約書で確認すること
- 「業務に必要な事前準備」「(作成した)教材」「機密事項」と書いてある場合は、具体的にどのようなこと、どんなものが含まれるか確認すること。
- 報酬の金額・キャンセル料が発生するタイミングを確認すること。
- 「業務遂行に必要な諸経費」と書いてある場合は、請求できる経費の内容を具体的に確認すること。
- 損害賠償:「乙(講師)は本業務遂行上生じた問題について責任を負う・・・」と書いてある場合は、責任を負うの範囲、賠償責任の範囲、期間、金額の上限を確認すること。無制限に請求されるリスク・不安を回避する。
- 知的財産: 作成した教材などは組織(学校)に譲渡することになるのか、自分の成果物として自分のものになるのか確認すること。
- 契約期限: 契約更新・解除のタイミングを確認する。講師側から契約解除したい場合、どのぐらい前に伝える必要があるか、または組織(学校)から契約解除の場合はどのぐらい前に知らされるのか知っておくこと。
- その他:組織側にばかり有利な点、講師として納得いかないことについては質問し、メールや録音など記録を残しておきましょう。
「(教師側)が全責任を負う」「一切の教材は・・・」「授業に関わる一切の準備は・・・」「諸経費」など、「全〜、全ての〜、一切の〜、諸(経費)」と書いてある場合、どのようなことが含まれるか確認してください。
信頼できる相手方の場合はここまで慎重になることはありません。公共団体、大学などの機関では問題ないと思います。単発の仕事は特に契約せず口約束で決まることもあります。その場合は「信頼できる相手方」かどうかを自分で判断します。
業務委託契約は基本的に自己責任となります。最後にこの3点を強調します。
業務委託契約でも雇用契約と見なされるケース
契約が「業務委託契約」であるにも関わらず「雇用契約」のように勤務時間・場所・仕事のしかたを支持され、講師がしばらている場合があります。その場合、委託契約であっても認められれば、労働法が適用されます
実際には雇用契約と見なされるケース
- 仕事の依頼・業務従事の指示に対して諾否の自由がない
- 業務遂行に対して指揮・監督の程度が強い
- 報酬が仕事の成果ではなく、時間給や日給で定められている
- 機械・器具が会社で用意され、業務の方法が定められている
- 報酬の額が一般従業員と同額である
- 専属性がある(その会社の仕事しかできない)
- 就業規則など職場で守らないといけない規則がある
働き方に疑問を感じる場合、労働基準局に問い合わせて確認しましょう。匿名で電話相談をすることもできます。