2019年10月から2020年2月まで代表黒田史彦先生(首都大学東京)の研究グループに協力させていただきました。黒田先生の研究グループは「対話的支援の多角的分析と支援対話メタデータベースの開発」に取り組んでいます。こちらの研究は、対話的支援の研究と実践を普及させることを目指し、実践データ及びその多角的分析結果を集約した支援対話メタデータベースを開発することを目的としています。対象は日本語学習アドバイジングやアカデミック・ライティング支援などの対話の実践です。その一環として、日本語学習に関する個別的なアドバイジング(ないしコーチング)を記録することが必要とされていました。記録とは、日本語学習者にアドバイザー(ないしコーチ)両者による模擬セッションの様子を複数回にわたって録画することです。また、模擬セッションの直後にアドバイザーへのインタビューを実施し、セッションにおける発問の意図などを記録することも目的でした。
対話支援の実践者として、日本語教師でキャリアコンサルタントの田中久実先生と日本語教師でコーチングの実践者として吉田に声をかけていただきました。
教師が学習者にアドバイジング(コーチング)をしている場面を5回記録し、振り返りのインタビューに答えること。インタビューは記録のビデオを再生しながら、学習者と対話をするとき、吉田が話を聴き、どのような意図を持って質問し、どのように助言や情報提供を行うのかお答えしました。
日本語教育界にこういった研究が存在することは今回初めて知りました。今、時代は「教師=教える人」→「アドバイザー・コーチ・ファシリテーター」へと益々変化しています。セッションを録画すると対話支援とは本当に奥が深いものだと気づきます。「もっと違う質問があったのではないか?」
「どうして自分はこの発言をしたのか?」「相手(学習者)の反応に注意を払えていたのか?」教師(コーチ)の関わりが学習者にどう影響するか?
それは非常に個人差が大きいのですが、ひとつ言えるのは次のことです。
教師は「自分自身の特性」と「自身の教育観・信念・興味・感情・思考の傾向」について自覚する必要がある。それは、学習者との関わりに色濃くにじみ出ます。今回は自分がどんな教育観を持ち、それがどのように言動に現れ、学習者との関わりに影響を及ぼしているか、振り返る良い機会でした。
自分の無自覚な部分がセッションの行方を左右する瞬間に気づき、冷や汗をかく場面もありました。教師が自己理解・自己分析をすることは必至だと思います。
これからの教師は授業にコーチングとアドバイジング、ティーチングの要素を意図的に取り入れることで、学習者によりよい支援ができるのではないでしょうか。
研究グループ代表の黒田史彦先生をはじめ、木下直子先生、トンプソン美恵子先生、貴重な経験をさせていただき感謝しております。