日本語学習支援者が「聴き方」(アクティブリスニング・傾聴)を学ぶことの最も良い点は、「相手と安心感のある関係性を築くことができる」ということだと思います。その上、話を聴いてもらうと気持ちが落ち着くなど精神面の効果、学習者の日本語会話の実践にも役に立ちます。学習者の目標やニーズを把握するのにも役に立ちます。
話を聴いてもらうと気持ちが楽になる
みなさんは「話を聞いてもらってよかった」という体験がありますか。話を聞いてもらう効果は様々です。「イライラが落ち着く」「元気が出る」「楽しい時間を過ごして気分がよくなる」「悩んでいた気持ちが軽くなる」などなど。実際私もそうです。
人に話を聴いてもらうことは「気持ちを受け止めてもらえた」「わかってもらえた」と感じて、気持ちが楽になる、元気が出るなど精神的な助けになります。反対に、自分の話を聞いてもらえなかったり、流されたりするとどうでしょうか。
自分が軽視されていると感じて不安になったり、その相手と話す気がなくなることもあります。もしかしたら「嫌われている」と感じる人もいるかもしれません。
支援者が学習者の話を聴くことで「あなたの話は大事です」「あなたの存在は大事です」というメッセージになります。そのことで相手の存在を認め、尊重している姿勢が伝わります。
一度だけでなく一貫してこのような姿勢で話を聴ことが大切です。「前回は聴いてくれたけど、今回はそっけない」という態度では相手は不安になります。いつも安定した態度で接することで、相手は「いつも話しやすい」「わかってくれそうだ」と感じ、安心感を持ちやすくなるでしょう。
日本語学習者が日本語を存分に話す機会は少ない
また、学習者にとって話を聴いてもらうことは日本語会話の実践の良い機会です。初級者はもちろん、上級者でも日本語を話す相手がない、機会がないという人は少なくありません。つまり、学習者が「日本語で存分に話す機会」は意外と少ないのです。話す機会があったとしても、学習者は日本語を話すとき「私の日本語は通じるのかな」「発音は大丈夫かな?」など不安もあります。そのため日本人といると”ほぼ聞き手”になってしまうことも多いのです。
「日本語を勉強しているけど話せない」「日本人の友達が欲しいけど、会話が続かない」「あいさつの後、何を話して良いかわからない」という学習者もよくいます。
その悩みを解決する方法の一つが、支援者が「聴き方」を学び、学習者に存分に話してもらうことです。学習者は安心して話せるようになり、会話が続けられるようなります。
実際に3ヶ月ほど授業をした学習者からこのような声もありました。「会話に自信がついた」「話せば話すほど日本語が出てくるようになった」など。
安心して話す機会を多く持つことで、学習者は「日本語が通じている」「話せている」という実感が湧き、自信が持てるようになってきます。
学習者の学習意欲にも影響する
最後に、「聴き方」は学習者の日本語学習の目標やニーズを把握することにも役に立ちます。「会話練習をしたい」「日常会話ができるようになりたい」と言っても、その意味するところは学習者によって様々です。日常会話の範囲は自己紹介や買い物だけでなく。社会問題、政治、経済の話を指すこともあります。その学習者にとっての”日常”を掘り下げて話を聴いてみないとわかりません。
学習者の話を聴き、興味のある話題を扱うなど、学習者の声を授業に反映させれば、学習者は「自分の声が取り入れられている」とわかります。自分で考え、話すことで授業の内容が自分ごとになります。結果的に学習意欲の向上にもつながると考えます。
まとめ:日本語学習支援者が「聴き方」を学ぶ理由
最も大きな理由:学習者と支援者が安心感のある関係性を築くことができる
・学習者が支援者に話すことで気持ちが楽になる。尊重されていると感じる
・学習者が日本語会話を存分に実践できる
・学習者の目標・ニーズ・悩みを聴き、よりよい支援の方法を探すことができる