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【ゲストスピーカー】早稲田大学「日本語学習者を支援する」

5月14日15:05より100分、早稲田大学にて「日本語学習者を支援する」(木下直子先生担当)の授業にゲスト講師としてお招きいただきました。

出席者は約30人の学生で、留学生もいました。この授業では「日本語学習者を支援する際のラポール形成の重要性」について講義を行い、ラポール形成の方法として傾聴の体験ワークをグループで行いました。今回の講義では、支援者のスタンスとして「支援者という役割はあるが、本来支援者も相談者も人間として対等である」という点を強調した。傾聴の技術面も必要ではあるが、ラポール形成において「相手のことも自分のことも尊重する姿勢が重要だ」という考えを示した。

①ラポール形成とは何かを理解すること。吉田の個人レッスンの経験とコーチングの基礎的な知識も交えて、学習者とのラポール形成の重要性について話し、他者との間に信頼関係を築くこと、学習者と関わる際の心構えなどについて話しました。。

②何故ラポール形成が重要なのか理解すること。一般的に相談場面で起こること、ラポール形成のない状態が相談者に及ぼす影響、信頼関係のある状態での対話、支援者が関わるときの対話のバランスについて話しました。

③ラポール形成の方法として、相談者の話を聞くときの傾聴のコツ、相談場面での環境を整えることについて説明し、吉田が支援者で学生の一人が相談者となりモデルセッションを行いました。その後、3人グループに別れて相談者・支援者・オブザーバーの役割を決め、傾聴体験ワークを行いました。

④質疑応答の時間には「相談者に共感を示すために自分の経験を話すことについて」「相談のゴールとは?」「今後コーチングやカウンセリングにA Iを使用することについてどう思うか」など、活発に質問がありました。

以下は学生のレポートより一部抜粋

アドバイスを与える側としては、どうしても自分より日本語が下手な相談者に「教えようとする」に寄りがちな側面があるが、相談者と支援者は、役割は違うけど人間として対等であるということを意識して、相手を尊重する姿勢がラポール形成の前提だと、今回の授業を聞いてわかった。グループで傾聴を実践してみたところ、相手の言葉を受けて返すのは意識していればそんなに困難に感じないが、相手の話が一旦終わった時に、どんな言葉を拾って聞いたらいいか、また、どういう聞き方をしたらいいかというところは難しく、十分な練習が必要だと思った。

今回のラポール形成と傾聴テクニックは、日本語アドバイジング以外の場面でも重要なことだと思った。傾聴の実践では、相手の言葉に相槌を打っていくことは意外とできたと思う。相談者の話がひと段落着いたときに、そこから適切な質問をしてさらに話を促すことが難しかった。相談者が話していることから、何がまだわかっていなくて深堀りするべきかを考えながら話を聞けるように、練習を重ねていきたい。

学習者のことを平均と比較して評価するのではなく、その人の過去と比較して成長しているかをみることが大事だと学びました。ひとりの人としての変化に着目して、フィードバックできるようになりたいと思います。また、自分についてもっと話す機会が欲しかったという学習者のお話がとくに印象に残りました。私たちは学習者が学びを進める上での「役割」が違うだけで、人としてはあくまで「対等」であることを忘れないようにしたいです。相手に関心を寄せてみたり、話をきいて信頼関係を築いていくことが大切だと感じました。

お話を伺い、コーチングは、相手の課題解決を助けるためのコミュニケーションだということがわかった。コーチングという名称だけで、先生と生徒というような上下関係なのかと思っていたが、あくまでアドバイスはするものの、対等でいるという点が面白かった。自分はどうしてもおしゃべりで、話してばかりいるので、相手の話を聞くという積極的な受動的な姿勢を心がけていきたいと思った。また、周りと比べないで、本人の中でどう変化したかに注目するという考えに共感した。

「相手に対して尊重する」ということはとても当たり前のことで、自分はできていると感じていたが、相手に対して優位に立てていることに喜びを感じている自分がいることに気付き、実際そこまでできていないのだな、ということに気付くことができた。他者を理解することは本質的には難しいかもしれないが、「自分」をしっかりとまずは理解し、他人との差を認識することができれば、相手の感情により寄り添うことができるようになる、と感じた。

カウンセル、コーチング、ヒアリングといった人の人間味が大事な仕事は AI に取られることはないと言われています。しかし、コーチングは思いのほか「型」や「ルール」が明確に決まっています。そのため、コーチングのプロットを AI に入力すれば、AI がコーチングを行うこともできるのではないか?と思いました。無論、コーチングするためには型やルールを抑えるだけでなく、ラポールを形成することが大事なのだと思いますが、、、

ABOUT ME
吉田 有美
日本語キャリアサポーター。著書「日本語教師のための はじめてのコーチング」。日本語ボランティア向け「学習者との会話を広げる深めるコミュニケーション」講師として活躍中。個人向けサービス「大人にための自己分析・自己理解」をテーマとするコーチングセッションを行う。日本語学習者への個人レッスンも提供中。